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自分が不安定なせいで、まわりの人間に気遣いされるのはとても苦しい。
「・・・大丈夫です」
いくら佑香が大丈夫だと言っても、本気で「あ、そう」と納得する人はまずいない。
「余計なことを聞いてすみませんでした・・・」
例に漏れず斉藤も佑香に謝った。
悪いのはあなたじゃないのにと佑香はそのたびに思い、でも自分が悪いとも決められず、結局行き場所がなくなってとにかくいたたまれなくなる。いつものパターンだ。
永遠にこんなこと、きっと続けられない。
だから、あの記憶から自由になりさえすれば・・・
「でも、・・・私は、『あの記憶』そのものよりも」
そのとき佑香は、医師にも言ったことがない気持ちを、突然斉藤に言いたくなった。
今言わなければ、きっとなくなってしまう。
『あの記憶』と一緒に、彼に【消されて】。
この気持も何もかも、つらいことは全部なくなってしまうことが自分の望みではあるけれど、それでも。
『それなら必要ないと思うか、それなら見てもいいと思うかはお任せします』
斉藤はさっき診断書を渡す前にそう佑香に言った。
そうだ。
どうせ消えるなら、言ってしまいたい。
ずっと誰にも言えなかった気持を。
「『記憶』そのものよりも、それで何で自分だけがこんなに苦しまなきゃならないのかって、そう思って・・・」
言葉にするとあまりにありきたりで、でもこれこそが自分の苦しみだ。
「友達や家族や、みんなは何で何も知らずに生きていけてるのに私だけ、って」
本当のことを吐き出すのは、息が詰まって苦しい。
目のまわりがじわりと熱くなってゆく。
「どうしてって・・・毎日毎日そう思うのが辛くて・・・自分が、すごく嫌な人間になってしまう気がして・・・私、これからどうなっちゃうのかって・・・それで」
知らなければ、あの現場を見さえしなければ。
違う生活を生きられたのに。
違う未来があったのに。
そう思うとたまらなかった。
自分の人生なのに。
「石見さん、大丈夫です」
涙でぐにゃぐにゃに歪んだ視界の向こうから、斉藤の声。
「・・・あなたはとても強い。大丈夫です」
手の甲で涙をぬぐうと、斉藤が佑香を見ていた。
その向こうに――
黒くて赤い塊。
ぐにゃりと地面に盛り上がる、あれは
何?
あれは
「あ・・・・いゃ、ああああぁぁぁッッ!!」
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