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幸が石見の異変に気がついたその瞬間、夕刻のファーストフード店を悲鳴が貫いた。

今まで涙を流しながら自らの言葉で語っていた石見の目は、今、限界まで見開かれ、幸ではない何かを見つめている。

「石見さん!」

発作だ、一体何が・・・

幸は石見の視線をたどり、その先で、客のコートとマフラーが椅子から床に落ちているのを発見した。

石見の発作が起きる引き金、『地面に置かれた黒っぽい塊』だ。

「石見さん、大丈夫、あれはコートです!」

「いやぁ!!」

目を固く閉じ、頭を抱え込むようにしている石見。

きっと彼女の瞼の裏には恐ろしい『あの記憶』・・・飛び降り自殺の現場の様子が映っているに違いなかった。

「石見さん、怖くありません、大丈夫」

押し寄せる恐怖から逃れる方法は、彼女が現実を取り戻すことしかない。

幸は身を捩る石見を抱え込みながら、何度もゆっくりと言い聞かせた。

「大丈夫」

記憶に現実を乗っ取られ、石見は懸命にもがいているはずだった。

暴走する恐怖心を理性で押さえつけるのは並大抵のことではない。
幸にはその感覚が良くわかった。
なかなか醒めない悪夢は、水面が見えないほど深い海底に似ている。

冷たくて、暗くて、苦しくて・・・そして、最初から最後まで、完全無比な孤独。

石見が頭を左右に振っている。まとわり付く記憶を振り払うように。

幸はその仕草にゾッとした。



今ここで、【消す】べきなのか。



さっき、石見の話を聞きながら、幸はこの件を保留するよう申請しようとほぼ決めていた。

石見はもう少しでこの経験を乗り越えられるのではないかと思ったからだ。

自分が【消して】しまうにはあまりに



あまりに彼女の努力と苦しみが尊いと、そう感じた。



「どうしたんですか!」

石見を抱え込むようにしている幸に、後ろから店員が声をかける。

我に返った幸は、状況を説明しようとしたが、その前に店員2名に手を抑えこまれてしまった。

「あの・・・」

「ちょっと一緒に来てください。警察を呼んでます」

幸は店員の視線で全てを理解した。石見はどう見ても女子高生で、自分は職業不明の男。
女の子が悲鳴を上げたら勘違いされても仕方がない。

店員2人に引き剥がされながら石見に目をやると、彼女はまだ錯乱状態だった。
人が集まってきたことが彼女を刺激しているのだろう。
警察が来ているならむしろ保護してもらった方が早くおさまるかもしれなかった。





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