「三田さん、入りますよ?」
幸はドアをノックする。小さな部屋だが面接用ではない。おそらく元は実験用に作られたスペースだろう。天井が高く、ガス栓やコンセントが必要以上に配されている。
少し落ち着かない気分になった。
この雰囲気は嫌いだ。
「・・・次は何ですか」
三田という男は椅子にぐにゃりと沈み込みながら、投げやりに発音した。
「お疲れのところすみません。すぐに済みます」
「?」
三田に近づき、手前の床に膝をつくと腕をまくってバングルを目の前に差し出した。同時に右手を三田の即頭部にさりげなくかざす。
「三田浩次さんですね?」
「そうですが」
「私はこういう者です」
三田の視線がバングルに移る。樹脂の表面に刻印されたアルファベットと数字を目で追うのを見ながら、幸はゆっくり話しかけた。
「これは・・・?」
「法定特殊能力第7種5番の斉藤です。今日はあなたの記憶をスキャンさせていただきに来ました」
「は?」
三田は一瞬考えた後、顔をゆがめて不快感を露わにした。
「ちょっと、聞いてませんよそんなこと!勝手にそんなことしていいと思って・・・」
「残念ながらもう終わりました」
「・・・」
三田の目を覗き込みながら幸がそう言うと、不思議そうな視線が返った。
「あ・・・?あの?どちら様・・・」
「すみません、部屋を間違えました」
幸はにっこりと笑い、立ち上がる。
「あ、そう」
「はい。お邪魔しました」
戻した袖でバングルを隠し、部屋を後にする。背後にはまだ三田の視線を感じたが、幸が「斉藤」の名乗ったことを含め、全て忘れているはずだ。

