「法定特殊能力第7種、認定番号5番の斉藤幸です。
坂島クリニックの坂島みちる医師に宛てられた診断書と紹介状を預かってきています。
診断書についてはあなたにも見る権利がある。見ますか?」
石見は坂島クリニックの患者ではない。
担当医療機関はこの街の公立病院だ。
幸の施術する対象はほとんどそうだが、その能力が必要だと判断した医師が坂島に幸の派遣要請を出す。
それを受けた幸はどこかその辺―例えばこのファーストフードチェーン―で患者と会うことになる。
坂島は幸に仕事を振り分ける「窓口」だ。
一体どういう経緯で彼女が選ばれたのか幸としては是非知りたいところだが、国からライセンスを貰った時点でそういうことになっていた。
幸は自分の能力に関してはプロフェッショナルだが、医師ではない。
そういう意味で、幸をサポートする医師はとにかく絶対に必要な存在なのだ。
「診断書・・・見たほうがいいんですか?」
石見は不安そうに尋ねる。
「あなたが見ても見なくても、どちらにしても僕が帰る頃には忘れてます。
それなら必要ないと思うか、それなら見てもいいと思うかはお任せします」
「そうか、忘れちゃうんですね・・・あれ?」
石見は遠くのものを見るように目を細めたあと、ふと何かを思いついたように首をかしげた。
「じゃぁ、斉藤さんのことも?」
「そうです。むしろ覚えてたら失敗」
石見が目を見開いた。
「・・・そうなんだ」
口元で呟くように言った後、「診断書、見せてください」と続けた。
幸は封筒を差し出すと、石見の向かいに座り、内側に水滴が見え始めたチーズバーガーの包みを開いた。
石見佑香の記憶を一部消去する、それが今回幸に依頼された治療の内容だった。
